News小林代表のインタビュー記事


2023/10/01

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週刊ファミ通10月5日発売号 GPTRACK50設立1周年インタビュー

さまざまなヒット作品に携わり、昨年に新会社GPTRACK50を設立。新たな1歩を踏み出した小林裕幸氏は現在アクションRPGを開発中!?

【プロフィール】
小林裕幸(こばやしひろゆき)氏(文中は、小林)
1995年にカプコン入社。『バイオハザード』や『デビル メイ クライ』、『戦国BASARA』、『ドラゴンズドグマ』など、多くの人気シリーズに携わる。2022年10月にはゲームスタジオ“GPTRACK50”代表取締役社長に就任。現在は完全新作を開発中。

 2022年8月に自身のSNSにてカプコンの退職を発表し、同年10月に新会社GPTRACK50の代表取締役社長に就任した小林裕幸氏。ファミ通では、設立から約1年間水面下で動いていた小林氏にインタビューを実施する機会を得て、GPTRACK50設立の目的や、開発中の新規タイトルの情報など、さまざまなお話をうかがった。小林氏は、新天地にてどのような未来を描くのか。「チャレンジをしていきたい」と語る氏のゲームへの熱い想いを、インタビューから感じ取ってほしい。聞き手:林克彦(ファミ通グループ代表)

スタジオ設立の理由は新たなチャレンジ

――GPTRACK50設立のニュース発表当時、ゲーム業界で大きな話題となりました。小林さんが新天地で活動を始めると決めたのは、どんな狙いがあったのですか?

小林 昨年、自分は50歳という節目を迎えました。定年が60歳だと仮定すると、残りは10年しかありません。ここからの自分のクリエイター人生を想像したときに“新しいチャレンジ”がしたいと思ったんです。

――その新しいチャレンジを実現するため、GPTRACK50を立ち上げたと。

小林 カプコンではチャレンジができないというわけではなかったと思います。実際、いろいろなエンタメに携わらせていただきましたし。ただ、もっと自由に新たなコンテンツを手掛けたいと思っていました。だから、まずは独立しようと考えていたんです。その際にたまたま知人を通してNetEase Gamesの人と知り合う機会があり、いっしょに新スタジオを創ろう! と意気投合しました。

――オファーがあったから独立を決意したというわけではなかったんですね。

小林 独立しようと思ったのが先ですね。自分としては渡りに船だったので、オファーがあってから半年くらいでトントン拍子に会社を立ち上げることができました。

――NetEase Gamesのオファーを受けたのには、どんな理由が?

小林 新たなエンタメを手掛けるなら国内のみではなく全世界に向けてやっていきたいと考えていましたが、NetEase Gamesはグローバルに展開していていることが理由のひとつ。もうひとつは、業界の大先輩である須田さん(※1)や名越さん(※2)も同様にNetEase Gamesの支援を受けているからです。自分の知っている先輩方に近い境遇であることが安心感というか心強さにつながりました。

――NetEase Gamesとやり取りをして、どんな会社だという印象を受けましたか?

小林 クリエイターを大切にしてくれる、意見を尊重してくれる、モノづくりに共感を持ってくれるといった印象を受けました。話をしていると「それいいですね」といったポジティブな反応が返ってきやすく、いっしょに仕事をしていこうと感じるゲーム会社です。

※1 …… 須田剛一氏。グラスホッパー・マニファクチュア代表取締役社長。

※2 …… 名越稔洋氏。名越スタジオ代表取締役社長。

新社名のキーワードは“ゲーム”と“プレイ”

――GPTRACK50という社名ですが、いったいどんな想いが込められているのでしょうか。

小林 社名はけっこう悩んで悩んで考え抜きました。GPTRACKのGはゲームのGです。ほかにもグローバルやギフトなどいい印象の言葉の頭文字だからというのも理由ですね。Pは遊ぶという意味のプレイのPで、これも社名に入れたいと。ですが、“プレイ◯◯”とか“ゲーム◯◯”みたいな言葉だと、商標が軒並み取られているんです。商標が通らないと社名にしたくないから、どうしたもんかなと。その後、考えを進めていくうちにGとPだけ残り、ほかの案で出ていた“TRACK”が加わりました。TRACKは記録とか軌跡などの意味があるので、“ゲームで遊んで記録する”とか“軌跡を残そう”とか、そういう想いを込めています。最後にユーザーとクリエイターが50:50の関係でいたい姿勢を表現するために50をプラスしました。今後50年やっていける会社に育てたいという意味もあります。

――さまざまな想いが社名に込められているんですね。このGPTRACK50では、どんなゲームやエンタメを手掛けていくのでしょうか。

小林 やっぱりゲームで勝負したいと考えています。過去には映画やアニメ、舞台などのエンタメに関わらせていただきましたが、自分の実績の中でもっとも評価をいただいているのはゲームだと思っていますから。

――小林さんがゲームで真っ向勝負をするんですね。それはうれしい限りです。まだお話できるタイミングではないのかもしれませんが、いったいどんな作品を?

小林 自分の過去手掛けてきたゲームから、「ホラーや戦国ものですか?」と聞かれることが多いのですが、そういったテイストではありません。現状お伝えできるのはジャンルのみですが、3DアクションRPGです。

――おお! まずはご自身の得意とするアクションで勝負したいと思われたのでしょうか。

小林 私もそうですし、GPTRACK50のメンバーにも「アクションがやりたい」という人が多いので、まずはアクションゲームをと。

――マルチ要素などもあるのでしょうか。

小林 まだ断言はできないですが、オンラインメインのゲームではなく、ひとりでじっくりとプレイするタイプのゲームになります。軽いオンライン要素は入るかもしれませんが、メインにはならないと思います。

――確認になりますが、完全新規タイトルを開発されると考えていいでしょうか。

小林 はい。本当にゼロから新たなIPを作りたいというのが、GPTRACK50を設立した理由でもありますから。完全新規IPなのでキャラクターや世界観も、当たり前ですがゼロからの構築になります。アクションのシステムとしても真新しいものを提供したいです。何百人という規模のスタジオではないので、手を広げすぎず、まずは自分たちだからこそ作れる最高の3Dアクションゲームにチャレンジしようと。シングルプレイメインで考えているのも、そういった理由に起因しています。

――アクションの難度についてはどうでしょうか。小林さんが過去に手掛けてきたアクションは『戦国BASARA』や『ドラゴンズドグマ』など、多彩な難度のものがありましたが。

小林 いわゆる“死にゲー”という難度にはならないです。逆に『戦国BASARA』のように、手軽に爽快感が味わえるというカジュアルなアクションにもしないつもりです。RPGの成長要素もあるため、倒せない敵がいたとしても育成すれば倒せるようにもなります。また、ジョブや属性、武器のような概念もあり、うまく敵の弱点を突けば楽に倒せるような仕組みも考えています。テクニックさえあれば攻略できるというのではなく、攻略方法を考えてプレイするようなおもしろさを提供したいですね。

――小林さんの集大成とも言えるアクションゲームになりそうですね。

小林 ゴリ押しでは進めていけないとは思いますが、成長要素があるのでアクションが苦手という人でも楽しめるのではないかと。

――世界設定やキャラクターなどのアートワークについてはいかがでしょうか。

小林 世界観の大枠はすでに固まっていて、それを絵的にどう表現していくのかを悩んでいるところです。シナリオについてはシナリオライターに入ってもらって、白熱の議論をくり広げている最中です。

――まだまだこれからという段階ですね。正式発表のタイミングも気になるところですが。

小林 来年の春にはテスト版を完成させる予定で動いています。正式な発表は、その後になりますね。設立2周年を迎えるころには、なんとか発表までこぎ着けたいです。来年も取材に来てもらえるようにがんばります(笑)。

――仮に来年発表となると、リリースは2024年末あたりとか……?

小林 いえ、そんなにすぐには出せないです! 家庭用ゲーム機向けのパッケージ販売にトライしたいですし、しっかりとしたゲームを提供するとなると2~3年はかかる見込みです。

――新たな、そして大きなチャレンジですね。

小林 まだ開発がスタートして間もないです。プロジェクトメンバーもまだまだ増えていきますし、固まっていない部分も多い。少しお時間をいただくことになりますが、いまはお待ちいただければと思います。

――小林さんとGPTRACK50の新作ゲームに期待しています。最後に、今後の意気込みをお聞かせいただけますか?

小林 冒頭にも話しましたが、ゲームを中心にいろいろなタイトルを手掛けたいと思っています。現在開発中のひとつだけでなく、もう1本、これはやりたいという企画もありますが、まずは1本目に全力投球でがんばります。オフィスではほかのスタッフと物理的に近い距離でコミュニケーションが取れていて、昔に戻ったような感覚で仕事できているので、すごく懐かしいし、楽しい感覚です。ゼロからモノ作りをするのは苦労する反面、非常に刺激的で楽しく働けています。最高におもしろいゲームをお届けするべく日々邁進していますので、ぜひ次報をお待ちください!

小林氏が作るゲームのヒント

小林氏が手掛ける完全新規タイトルは、まだまだ謎にヴェールに包まれたまま。しかし、インタビュー中には、そのヒントとなるキーワードがいくつか飛び出している。インタビューで登場したキーワードや、過去に小林氏が手掛けてきたシリーズタイトルから、現在開発中のゲームについて思いを馳せてみてはいかがだろうか。

(1)ジャンルは3DアクションRPG

育成要素やジョブの概念もある

(2)簡単すぎず難しすぎずな難度

手軽な爽快感が味わえるゲームではない

(3)ホラーや戦国ものではない

小林氏が手掛けてきた過去タイトルとは異なるテイストになるとのこと

(4)オンラインゲームではない

ひとりでじっくり遊ぶタイプの内容に。軽いオンライン要素はあるかも?


ファミ通.com(https://www.famitsu.com/news/202310/05317373.html)ではインタビューの完全版を掲載!